リキュールとは、スピリッツ(蒸留酒)に香味成分を配合し、別種な味わいに仕上げた酒の総称である。 植物性成分を用いたものが多いが、動物系の乳、卵などを利用したものもある。 リキュールの誕生には蒸留酒の存在が前提されている。 その意味でリキュールは、錬金術師たちが蒸留酒づくりの技法を発見したのち、そのバリエーションとして生まれた酒ということができる。
蒸留酒は、ラテン語でアクア・ヴィテ(生命の水)と名づけられ、生命維持のための薬酒として用いられた。 その蒸留酒に、さらに各種の薬草の成分を溶かし込めば(ラテン語でリケファケレ)「生命の水」をしのぐ薬用効果をもった酒が生まれるだろう、 そういう考えから生まれたのがリキュールであり、名称もリケファケレから起こったものである。
そうしたリキュールをつくる技術は錬金術師たちから、やがて修道院の僧侶たちに伝えられ、中世には、修道院はそれぞれ独自のリキュール調整に励んでいた。 ヨーロッパでは、今でもその伝統の延長線上でつくられている薬草系のリキュールが各地に散見される。
近世の大航海時代になると、新大陸やアジアで産する植物や砂糖がヨーロッパに輸入されるようになり、リキュールの原料は一挙に多様化していった。 さらに18世紀以降には、医学が進歩したため酒に医薬的効用を求める気風が次第にうすれ、フルーツの香味を主体とした美味追求型のリキュールが台頭する。
こうした酒は、ヨーロッパの上流階級の婦人たちの愛飲するところとなり、彼女たちは、身につける衣装や宝石の色と、 手にもつグラスの中のリキュールの色をコーディネートして楽しむようになる。 そのため、リキュール・メーカー側でも着色の方法をさまざまに工夫し、色彩の美しいリキュールづくりに心を砕くようになった。 リキュールが「液体の宝石」という異名をもつようになったゆえんである。
現在、リキュールの製造にあたっては、蒸留法、浸漬法、エッセンス法などが使われているが、一つの方法だけでつくられるものは少ない。 たいてい、二つ以上の方法を併用している。 したがって、こうした製法でリキュールを分類することは事実上不可能に近い。 そこで、香味成分の主原料を軸に、便宜的に次ぎのように分類される。 薬草・香草系、果実系、ナッツ・種子・核系、特殊系、なお日本では酒税法上、レディーメイドの瓶詰め、缶詰カクテル類もリキュールに分類される。
リキュールのなかにはクレーム・ド・カシスのように、クレーム・ド・〜という名称のものがかなりある。 ECは、1L中に250g以上の糖分を含むリキュール(クレーム・ド・カシスのみ400g以上)をクレームと規定している。 なお、リキュールの場合、エキス分とはほとんど糖分を指しているので、エキス分の高い酒ほど甘みが強いと判断して差し支えない。